I find.

浮かんだ言葉を綴ります。

ほのかに灯る。

ほのかに灯る 
闇の中 ひっそりと
その火を絶やさぬよう
両手に焼けるほど包んで 守る
そよ風にさえ、尽きそうな 煌めき
大切に 守る
消えてしまって なくなるかもしれない
姿だけを 残しては 留まれない 
さあ 吹き消してと 囁かれ
足元から 遡る
ほろりと 流れ落ちた 涙を
地面が 吸いこんだら
新たな息吹を 夢見て
深い深い地下水脈の旅に出る

帰りたいと。

帰りたいと思うのに
それはいったいどこなのか


見たことも行ったこともない場所に
懐かしさを越えて欲するもの
それは郷愁というものなのか
この身体のどこかに埋め込まれた記憶
経験や環境や知識が及ばない
遥か遥か奥底に漂うもの
幾年の世代を経てなお
脈々と波打つ鼓動
ふとした時に浮かび上がっては
一時の迷いのように消えていく


新緑にこぼれる光の粒 山笑う
海原に爽やかに映る空 波踊る
黄金の稲穂に渡る風  日沈む
凍てつく地に立つ木々 星冴える


わたしたちの預かり知らぬ
その恐ろしくも慈愛に満つる風景が
あの頃のわたしが見たもの


頭でも心でもそんなものではなくて
わたしの無意識がそれを憶えている
この身ひとつで大地に立ち
風に向かい
未知の空を望む
踏みしめる地は柔らかく
次の一歩をいざなう


くっきりと分けられたわたしは
虚空を眺め
瞬間的に時に迷い込む

わたしの名は。

 わたしの名は 授かりそして選んだもの


 わたしは わたし


 時々 その表層は違えど


 わたしは わたし


 その輪郭が犯される時のみ
 わたしは 戦う


 大切に包んでも すぐに溶けてしまう淡雪のような
 哀れな 自尊心


 でも
 無くしては生きていけない


 わたしは わたし